横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.181  『 くものすおやぶん ほとけのさばき 』
秋山あゆこ/さく    福音館書店   

出版社の内容紹介では以下のように書いてあります。
 くものす親分ことオニグモのあみぞうと子分のぴょんきちが、虫の町を舞台に大活躍するシリーズ第2弾。お参りの虫たちでにぎわう“つくつく寺”から仏像を盗み出そうとする盗賊団を追って、変装したぴょんきちが敵地に乗り込み、親分のクモの巣が宙を舞う。セミの生態をいかしながら、虫の寺の生活ぶりが見事に描かれ、昆虫の姿の仏像群も美しい、痛快時代劇絵本 。

この絵本の面白さの一つはくものす親分の軽妙な語り口です。
  「ばちあたりのことを ふてぇやろうだぜ……そうじはちっとまってくれ」
  「こんなに あしあとを のこしやがって。ドジな やろうだぜ」
  「ふうむ よめたぜ。つちのなかを とおって きやがったな」
こんな江戸っ子口調が子ども達にはやるといいなと思っています。

もう一つは絵の描き込み
仁王門の大提灯や仁王様が蝉、門前町の様子、台座がゾウムシと、ガの日光月光菩薩、千手観音ならぬ百足観音、愛のメッセージを送る手伝いをする愛染明王は、丸い巣に乗ったスズメバチ。スズメバチの持つ矢とともに送られるメッセージはどんなものでしょう。百足観音の手ではなく足に持っている仏具も見ものです。仏教には、馬頭観音など動物の姿をした仏様は存在するのですが虫の仏様を見たことがありません。また虫たちの着物の柄にも注目してください。

ゲンゴロウの着物はオタマジャクシなのかと勝手に想像して楽しんでいます。他の着物も見てください。

階下の便所にはウンチが丁寧に描かれていますし、千両箱が隠されていたり、貧乏浪人が唐傘張りの内職をしています。蝉の顔つき(?)はよく見ていたので『なるほど』と思いましたが、くもの顔(?)をまじまじと見たことがありませんでした。この本を見てから壁を這っている大きな蜘蛛を捕まえ、丁寧に見たら、本当に、くものす親分と同じ顔(?)でした。作者秋本さんの虫好きは本ものでした。

園児のお母さんから「『なむみんみんだぶつ』、『つくつくおーし』ってなーにと子どもに聞かれて答えられないんです。園長教えてください」と言われたことがあります。ストーリー、絵だけではなく、南無阿弥陀仏からみんみんだぶつを連想する作者のイマジネーションにも感服の至りです。     (具)

くものすおやぶん ほとけのさばき

くものすおやぶん ほとけのさばき

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