横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.179  『 百年の家 』
絵/ロベルト・インノチェンティ  作/J.パトリック・ルイス   訳/長田弘   講談社

文学少年でも文学青年でもなかった私は、直木賞だの芥川賞だのには全く関心を持たずに生きてきました。その私が、第143回(2010年度)の直木賞受賞作を書店で見かけ、思わず買い求めてしまったのは、ひとえにその『小さいおうち』というタイトルが気になってしまったからです。 。

今年、直木賞を受賞した中島京子さんの小説『小さいおうち』(文藝春秋)が、かの有名な絵本『ちいさいおうち』(バージニア・リー・バートン/作 石井桃子/訳 岩波書店)とタイトル以外にも共通点を持っているか否かは、是非ご自身で両作品を読んだ上で判断していただくとして、今月は「家」をテーマとした絵本を1册紹介したいと思います。

今回取り上げる絵本は、以前紹介した『ラスト・リゾート』と同じく、ロベルト・インノチェンティとJ.パトリック・ルイスのコンビによる『百年の家』という作品です。『ちいさいおうち』とはタイトルからして全然似ていないじゃないか、というご指摘もあろうかと思いますが、原題は『THE HOUSE』と『THE  LITTLE  HOUSE』。それでも、画風も内容も全く違っていて、第三者的な視点に立って描かれている『ちいさいおうち』に対し『百年の家』では、「家」自身の目と言葉を通して、そこに住まう人々にまつわる出会い、誕生、死、別れといった悲喜こもごもが、淡々と、しかし愛情深く描かれています。

絵本の最後には、まさしく現代そのものの情景が描かれ、「家」自身が何も語っていないことが余計に気になってしまいます。半分あきれながら「今は、この平和な時を楽しみなさい」とでも言っているのでしょうか。これも、どうぞご自身の目でお確かめになって下さい。(S.T)

百年の家

百年の家

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