横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.161  『 ラストリゾート 』
絵 ロベルト・インノチェンティ 文 J.パトリック・ルイス    訳 青山南  BL出版

「きっと、いいものがみつかるよ。ここは、こころにぽっかりとあながあいてしまったひとたちの、リゾート・ホテルだから」。表紙の帯に書かれた、ちょっと気になる台詞ですが、私がこの本を手に取った理由は、この言葉のせいではありません。私とて心に穴の一つや二つはあいています。それでも、幸いにしてまだぽっかりというほどではないからなのかもしれません。私がこの本に惹かれた一番の理由は『ラストリゾート』という、絵本に付けられた題名そのものなのです。

絵本の内容は、想像力をなくしてしまったことに気づいた作者が、愛車のルノーを駆って、想像力探しの旅に出るところから始まります。車は「ドコカダレニモワカラナイトコロ」に向かう道を進みますが、これは単純に未来を指しているのでしょうか。しかし、道を外れた途端、車は物語の世界へと入っていきます。そして辿り着いたのは海辺の小さなホテル。そこには、謎めいた、でも誰もが知っている人たちが次々と迷い込んできます。

絵本の題名が、「イーグルス」の有名なアルバム『ホテル カリフォルニア』の最後に収められている曲と同名であるのは偶然なのでしょうか。作者の意図は分かりませんが、訳者である青山南さんの中では、この二つを結び付ける思いがきっとあったのではと、勝手に想像をめぐらしてしまいます。

それにしても、裏表紙に描かれたホテルの前に立つ少年は誰なんでしょう。少年の頃の作者なのでしょうか。それともこの絵本の世界に入り込んだ私自身なのでしょうか。懐かしい「イーグルス」のアルバムでも聴きながら、一緒に謎解きでもしてみませんか。(S.T)

ラストリゾート

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