横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.150  『 てとてとてとて 』
浜田桂子  さく    福音館書店

朝、出勤する道で、ハザードランプを点滅させながら停留所に止まっているバスを見かけるようになりました。 最初は故障でもしてしまったのかと思っていましたが、じきに車椅子に乗っている人が乗り終わるのを待っているということがわかりました。バスに車椅子で乗降するには、降車口に特別なスロープを付けなければならず、どうしても時間がかかってしまうために、そのバスの後ろに同じ路線のバスが3〜4台繋がってとまっていることもありました。また、車椅子を使っている人が、丁度やってきたバスに自由に乗るのではなく、何時何分の何系統のバスに乗るということが、あらかじめきめられているらしい、ということもわかってきました。

お話おばさんとして活躍されている藤田浩子さんは『おかめはちもく』(2001年 『藤田浩子の語りを聞く会』発行)の中で「街なかを描いたらその中に一人ぐらい、学校を描いたらその中に二人ぐらい、ハンディを持った人が、描かれることのほうが、当たり前なのではないでしょうか? 道路や駅を描いたら点字ブロックの道も描き、美術館や公民館を描いたら階段だけではなくスロープも描くのが、当たり前なのではないでしょうか?ハンディをもった子どもたちが当たり前に地域の学校に通い、ハンディをもった人が当たり前に街の中を歩ける社会になっていないから、絵本にも描かれないのでしょう」と書かれていて、朝の光景を目にする度に、この言葉が思い起こされました。

今回ご紹介する絵本の作者である浜田桂子さんは、その作品の中に、いつも当たり前のように点字ブロックや車椅子に乗った子どもが描かれていて、藤田さんと同じ思いをもっていらっしゃることが分かります。

この作品は「ては いつも やくにたってくれる。でも それだけじゃない。 もっと もっと すてきなことも できるよ」 という言葉に始まり、さまざまな手のはたらきについて描かれています。 手ということもあって、点字や手話についても描かれていますが、決して障害を主題にした絵本ということではなく、大勢の子どもたちの自然な、そしてはつらつとした姿が溢れていて、どのこどもたちからも、一人ひとりの楽しい物語が、ちゃんと伝わってくる素敵な絵本なのです。(S.T)

てとてとてとて

てとてとてとて

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