横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.149  『 よにもふしぎな本をたべるおとこのこのはなし 』
作 オリヴァー・ジェニファーズ   訳 三辺 律子  にいるぶっくす  

何かのコマーシャルだと思いますが「本は心の糧」という言葉を聞いたことがあります。そして、今回ご紹介する絵本は、本のおいしさに気付き「本は体の糧」とばかりに、本を食べることが大好きになってしまった男の子のお話です。しかも、この子にとって、本を食べることは、体だけではなく「頭の糧」にまでなっていくのですからまさに一石二鳥。でも、そううまい具合にだけ話が進んでいく訳はありません...。

私が高校生の時、新しい本を買うと、まずインクの匂いを嗅いでから紙の手触りを確かめて読み始める友人がいました。今から思うと、本当は内緒でちょこっと舐めたりとか、読み終わるとこっそりかじってみたりとかしていたのかもしれません。また、当時「暗記用の英単語辞書(『赤単』とか『豆単』と言われていました)の覚えたページを食べると忘れない」という話もありましたが、実際にやってみたという人は一人も知りません。

多くの民族の食文化の根底には、食べるということは、単に生命活動のためのエネルギーを摂取するということではなく、他の貴い命を自らの中に取り込むとことだということがあります。書物の生命が人類の知識や人の思いを伝えていくためにあるのであれば、絵本の男の子が、本を食べることによって知識を得ていったということは、人間の営みや書物の使命の本質に通じる行為なのかもしれません。でも、丸のみや食べ過ぎはやっぱり良くないということなのでしょうね。絵もお話もとてもコミカルで楽しく、食欲と読書の秋にはぜひともお勧めの1册なのです。(S.T)

よにもふしぎな本をたべるおとこのこのはなし

よにもふしぎな本をたべるおとこのこのはなし

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