横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.140  『 クリスマスのものがたり 』
フェリクス・ホフマン さく  しょうの こうきち やく  福音館書店

2ケ月ほど前のこと、夢に20年以上も前に亡くなった母親が久し振りに出てきて「子ども(母親からしてみれば孫)に万年筆をあげるって約束していたのにそのままになっていたから渡しといてちょうだい」と言いおいていきました。今の学生は万年筆など使わないだろうと思いながらも、一応「万年筆使う?」と聞いてみると、予想通り何を言っているのだろうという反応で、ちょうど自分の誕生日前でもあり、私に渡したかったということなのだろうかなど、あれこれ思っているうちに12月になってしました。

今回ご紹介する『クリスマスのものがたり』は、まさに12月にふさわしい絵本で、表紙には東方の3人の賢者(聖書では占星術の学者)が、星に導かれてイエスの生まれた馬屋を訪れ、贈り物を捧げている場面が描かれています。この賢者に関しては、もともと聖書にはどこにも3人とは書かれてはおらず、後に贈り物の数から3人となり、6世紀にはその3人の名前も決められて、それぞれヨーロッパ人、アジア人、アフリカ人、年齢も老人、中年、若者、一人は必ず肌の黒い人が描かれるようになったと聞いていますが、この絵本でも忠実に描写されていて、他の部分を含め、ホフマンが厳粛な気持ちを込めて作り上げた作品だということが伝わってきます。ホフマンが亡くなる年に出版された最後の絵本で、それこそ私たちへの最後のプレゼントとなりました。

ちなみに世界遺産にも登録されているケルンの大聖堂の中心部には、王冠をかぶった3人の賢者の頭骸骨が聖遺物としてまつられています。私にはその真贋のほどはわかりませんが、ヨーロッパの人にとって、聖書の物語は私たちが感じているよりずっと身近で魅力的なものであり、聖遺物を巡って、ダヴィンチ・コードのような作品が次々と生まれてくる理由もそのへんにあるのでしょう。 。

ヨーロッパ人でもクリスチャンでもない私としましては、母親の願いもあることですし、ちょっと素敵な万年筆でも買って、自分へのクリスマスプレゼントにしようかとも思っていますが、そういえば、映画『三丁目の夕日』の中で、淳之介君がサンタさんから貰ったプレゼントも万年筆でしたね。(S.T)

あれこれたまご

クリスマスのものがたり

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