横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.137  『 三びきのコブタのほんとうの話 』
ジョン・シェスカ 文 レインスミス 絵 いくしまさちこ 訳

このところ「大連立」の問題で民主党の党首が辞任をするだのまたそれを撤回するだのといった話題で持ち切りでしたが、その後「そもそもは某新聞社の主筆が持ちかけた」などの話も出てきて、状況がますます混み入ってきました。密室政治との批判がなされていますが、一昔前なら最初から最後まで庶民は何も知らないままに決められてしまっていたのでしょう。それが今は、お互いに自分達が有利になるように情報操作をし、意図的に情報を漏らす時代になって、なんでそんな話が出てくるのかと、びっくりさせられてしまうのかもしれません。

今回ご紹介する絵本では、かの有名な「三びきのコブタ」の物語りが、当事者であるオオカミの証言をもとに描かれ、皆さんの知っているお話とは180度違った内容になっています。そして、ジョン・シェスカの思わず眉をひそめてしまいそうな言葉遣いもさることながら、なんといってもレイン・スミスの毒が満載の絵が秀逸で、健全なお母様方なら絶対に買ったりはしないだろうし、どこの幼稚園でも、まず読み聞かせなどに取り上げたりはしないだろうと自信を持って言える代物になっています。

しかし、それほど毒を孕んでいるにも拘わらず、いまだに版を重ねているところをみると、子どもの目につかないように、内緒でご覧になっている人も少なくないということで、毒とか内緒とくれば、毒饅頭とか密室に繋がっていく要素を誰しも持ち合わせているということなのでしょうか。

この絵本は、1964年にアメリカで出版されて以来、1973年にはフランス語にも訳されロングセラーを続けています。名前だけは聞いたことがあるという方も多いのではないかと思いますが、じっくり読んでみることをお薦めします。作者の思想が現れているからだと思うのですが、読む人によってさまざまな感じ方ができるところにこの絵本の奥深さが感じられます。

この絵本にも、「DAILY  WOLF」と「THE  DAILY  PIG」という二つの新聞が登場し、お互いの立場で都合の良い記事を載せてますが、まさに今の社会情勢にぴったりの絵本と言えてしまうのかもしれません。(S.T)

三びきのコブタのほんとうの話

三びきのコブタのほんとうの話

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