横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.136  『 なみにきをつけて、シャーリー 』
ジョン・バーミンガム さく   へんみまさなお やく   ほるぷ出版

細かい砂利の中から色付き小石を夢中になって探している子や、わざわざ砂利を長靴に敷き詰めて空を仰いで歩き回る子どもを見ていると、子どもの心の中を覗いてみたくなります。

「なみにきをつけて、シャーリー」は子どもの世界と、おとな(親)の世界を左右のページに分けて同時進行させていく絵本です。

シーズン前の海岸に両親と犬と来たシャーリー。浜辺は丸い石の浜。次の場面から左頁は線で囲まれた背景の無い絵で固定された視点で両親を描き、デッキチェアーでくつろぐ両親と母親の言葉(小言)、右頁は色調を変え、シャーリーが空想の世界でダイナミックに海賊と闘う姿が描かれます。

「別世界に生きている親と子」、「子どもの心を理解できない親」、「子どもってたくましいね」「親は○○でも子は育つ」など、無関係な親子を描いている絵本と書評では書かれていることが多いのです。

親は子どもの事を思い、子どものために浜辺で遊ぶ時間をとっているのに、結局小言を言い、時間を共有しているだけと見られますが、シャーリーが遊ぶ絵を見ると、いろいろな発見があります。

「いっしょにあそべばいいのに」と言われるとたくさんの海賊と遊び、「あたらしいくつをタールでよごしてはだめよ」と言われるとシャーリーの靴は真っ黒になり、犬を「ぶったりしてはだめよ」ではボートのオールがぶつかりそうになります。

「まあ たいへん、こんなじかん! いそがないと おそくなっちゃうわ、 さあ」のお母さんの言葉で父親は目を覚まし、3人は帰路に着きます。

見返しの絵はバスと犬とデッキチェアーに座る両親が描かれていますが、シャーリーはどこにいるのでしょうか。ANGLIA は ラテン語でイギリスだそうです。

絵本は絵をじっくり見ると新しい発見を楽しむことができます。皆様も、絵をよく見て、絵本を楽しんでください。

この絵本を見てあなたはお母さんの立場で読むでしょうか、それともシャーリーですか?(具)

なみにきをつけて、シャーリー

なみにきをつけて、シャーリー

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