横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.132  『 漂流物 』
作 ディヴィッド・ウィーズナー BL出版    

6月に園の行事で地曳網を行いました。漁の多い少ないは年によってまちまちですが、捕れる魚の種類は毎年大体同じで、びっくりするような魚にはなかなかお目にかかれません。それでも海は未知の部分も多く、ひょっとしたらとんでもないものでも入っているのではと、網を引く時はいつもワクワクしています。

網を曳き終わった後、昼食を済ませ、お休みをした子どもたちへのお土産にでもなればと、綺麗な貝などあちこち探してみました。残念ながらお土産にできそうなものは見つかりませんでしたが、浜には、いろいろな海草や大きな蟹の甲羅、貝がびっしりと付いた破片などが打ち上げられていて、あれこれ想像しながら楽しく見て回りました。

今回紹介する絵本は、探究心旺盛な少年が、浜辺で見つけた不思議な漂流物のお話です。不思議な漂流物というと、手紙の詰められた瓶や魔法使いの閉じ込められた壷などが思い浮かびます。しかし、少年の見つけた漂流物はもっともっと想像力をかきたてる代物で、この漂流物を通し、海に生きる生物と地上に生きる人間との間で、長い時間をかけた文通が行われているようにも思えたりもします。お互いに出会うことのない人や生物同士が、何かを媒介にして、時間や場所を超え繋がっていく。そんな不思議な縁に自分も巡り合えたとしたら何て素敵なことでしょう。それでも、私ならこんな素敵な漂流物を手に入れたらきっと大騒ぎで、絶対に自分だけのものにしてしまうのではと心配ですが、あなたならどうでしょうか。この作品によって、デイヴィッド・ウィーズナーは2007年に自身3度目のコルデコット賞を受賞しており、まさにその賞にふさわしい作品だと思います。(S.T) 

漂流物

漂流物

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