横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.80  『 おとぎの国の郵便切手 』 (今月のおまけ)
安野 光雄   岩崎書店

ここだけの話ですが、実は私、毎年郵政公社には内緒でこっそり切手を作っております。とはいっても、クリスマスの前にサンタからと偽って、そっと保育室に手紙を置いておくだけですから、消印も偽造しているとはいえ、一抹の不安は感じつつも、きっとお咎めなしと信じております

もうちょっと正直に申しますと、切手の偽造には子どもの頃から手を染めておりまして、親の留守を見計らい、おっかなびっくり足踏み式のミシンを扱いながらミシン目を入れたりもしておりました。

それでも、多くの子どもと同じように、純粋に切手集めに熱中していた時期もありました。学校の休み時間に友達同士で交換しあったり、僅かな小遣いを握り「古銭・スタンプ」の店に何時間も入り浸っていた頃を懐かしく思い出します。当時の私やその仲間達にとって、切手は大事な宝物であったと同時に、初めて身近に接した芸術品でもあったように思います。

作者の安野光雄は、だまし絵的な作品において、よくエッシャーと比較されることがありますが、そのエッシャー自身も、オランダ政府の要請を受け、何種類かの切手をデザインしているのは何か不思議な感じがします。しかし、どこか不気味さと紙一重の印象が漂うエッシャーの作品とは対照的に、安野の作品は暖かくユーモアに満ち、この絵本も有名な童話や昔話をパロディーにしながら、それぞれの主人公を切手に描いていくという形でお話が繋がっていきます。他の絵本に比べ文章が長くなっていますが、切手をシートにすることで文字との調和もとれていますし、B6版程度の小さな造りになっていることも、切手本来の大きさを大切にしているように感じます。私などは、子どもに読むよりも、自分の宝物として、そっと本箱にしまっておきたくなってしまうのです。 (S.T)  

おとぎの国の郵便切手

おとぎの国の郵便切手

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