横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.76  『 わたしが おひさまだったら 』
片山 健作 福音館書店 (こどものとも月刊予約物語絵本 2004年11月)

きっと私は何回生まれ変わっても「わたしが おひさまだったら」なんて考えることなどないだろうと思う。それでも何とか想像してみると、極寒の地に生きる人々の営みの厳しさを目にした時や、日も射さぬ都会のビルの隙間にひっそりと咲く花を見つけた時などに「私が太陽だったらもっと照らしてあげるのに」と思うのかもしれない。いずれにしても、生きることの大変さや切なさといったこととどうしても結び付いてしまうような気がする。わたしのどこをひっくり返しても叩いても、この絵本の少女のような「わたしが おひさまだったら みんなに『おはよう』っていうな」なんて素敵な言葉は出てこないのである。少女は、苦しさや暗さなどの蔭は微塵も感じさせず、生きる喜びそのままに世界中へおひさまの光りを届けにいく。

「太陽も死もじっと見詰めることはできない」というラ・ロシュフコ?の有名な言葉があり、大人はその響きにちょっと酔ってみたりする。しかし、絵本の中の子ども達は、みなそんな言葉とは無縁に、太陽の光りと戯れている。私達の周りで、遊びに熱中している子どもも同様に感じられるのは、子ども自身が太陽の分身だからなのだろうか。この絵本は、そんな子ども達のエネルギーに満ち、読者もその力を感じて、幸せな気持ちになっていく。この絵本自体が、手のひらに載る小さな太陽といえるのかもしれない。

朝、布団の中でいつまでもグータラしていることの好きな方にとっては、日の出などあまりありがたくないことが多いと思う。でも、この絵本を読めば、きっと朝の訪れとともに、世界の中心から「おはよう」と投げかけてくれるの絵本の少女と出会えるはずである。(S.T )

わたしが おひさまだったら

わたしが おひさまだったら

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