横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.64  『 ニーナはおちびさん 』
作・ ジャックケント  訳・なかがわけんぞう  好学社

この絵本は、黄色をベースに青と白の3色だけで描かれています。はじめてこの本を手にする人はそのシンプルさに「この色使いは」とか「まあ?」など、おもわず心の中でつぶやいてしまうかもしれません。しかし、「どうしてこの色使いなのか?」という疑問は、絵本を読んでいく中で、それぞれの色がおんなの子の気持ちを表しているのかも・・・と思えてくるはずです。

絵本の表紙には花びんのおかれた大きなテーブルと青いリボンを頭に付けたテーブルよりも小さなおんなの子が描かれています。その子の名前はニーナ、どこかをジーッと見ています。ニーナの目に写っているものはいったい・・・。思わずページをめくると、こんな書きだしで絵本は始まっていました。「ニーナはとても小さいおんなの子、だからニーナの見えるところといったらうらがわばかり、もしも高いところを見ようとしたら・・・。たなのうえの物がほしいときは・・・。けれど大人は時々ニーナにいいます。だめだめもうくたくたよ。ほかにすることがいっぱいあっていそがしいのよ。家の中でうらがわばかり眺めているニーナは「大人になれたらいいのになあ」と考えていました。そんな或る日、ほんとうに大きくなりたいと思ったとたんニーナはふいに大きくなってしまったのです。願いの叶ったニーナですが・・・ここから先は絵本を読んでのお楽しみ!

子どもの頃、「早く大きくなりたい」と誰もが願いました。けれど、大人になってしまうと、いつのまにか子どもの頃のことを忘れてしまい、子どもが何を必要とし、何を想っているのかわからずに戸惑ってしまうのです。

絵本の中で、ニーナは「お父さんやお母さんがいつも言っていたほかにすることってどんなことかわからない」と言っていますが、この言葉ほど子どもと大人の思いの違いを表した言葉はないのかもしれません。

私は園生活の中で、子ども一人ひとりの視線に合わせ関わることを大切にしていますが、 ニーナの視線で描かれているこの絵本を読むと、子どもの頃の自分に会えるような懐かしい気持ちになるのと同時に、これからも子どもの視線を大切にと励まされている気がしてきます。

またニーナとは逆に、突然私が子どもにもどったら・・・などと思ったりもするのです。 (はな)

ニーナはおちびさん

ニーナはおちびさん

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