横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

番外  『 いわむらかずお絵本の丘美術館 訪問記 』 (今月のおまけ)

絵本作家のいわむら先生を「絵本の丘美術館」にお訪ねしたいという声は、教育研究大会での先生の講演を伺った直後よりあがっておりました。しかし、思いだけが空回りをして、具体的な計画が決まったのは7月になってからのことでした。そして、参加メンバーも確定しないまま当日を迎えることとなったのです。

8月27日(水)、前夜から降り続いた雨も昼前にはすっかりと上がり、強い日差しの中を、14匹ならぬ総勢15人での訪問となりました。

那珂川を渡り、冷夏の心配をよそに緑に輝く水田の美しさに目を奪われながら進みます。馬頭温泉郷への入り口や何軒かの小砂焼の窯元の看板を過ぎ、案内に従って道を折れると、木々に囲まれた穏やかな登りとなり、ほどなく、間隔をおきながら道の途中途中に駐車場が設けられていました。便利さではなく、少しでも自然と調和しようという配慮がなされていることが感じられて、期待に一層胸が高まっていきました。

駐車場に車を置き、道を少し上ると、美術館に通じるライラックの小径の奥に、美術館の玄関が顔をのぞかせています。いよいよ待ちに待った「いわむらかずお絵本の丘美術館」に到着です。 二重に作られた玄関を入ると、館全体を包む優しい木のぬくもりに、自然と心が和らいでいきます。家庭的な雰囲気を醸し出す小ホールを隔てて設けられた展示室には、ちょうど今森充彦先生の美しいトンボの写真や『14ひきのとんぼいけ』の原画を中心とした作品がゆったりと並べられ、静かに来訪者を待っている気配が伺えます。

いわむら先生とは、無理をいって当日お会いできる約束をしていたものの、お忙しい先生のこと、挨拶ができるだけでもと覚悟をしていました。しかし、以前お会いした時にも増してにこやかな笑顔で出迎えて下さった先生は、「絵本の丘」で実現できた、広い自然のフィールドを持った美術館活動について丁寧に説明をして下さった後、山道を一歩一歩進むごとに少年・少女に立ち返っていく我々を連れ、長時間に渡って広いフィールドの隅々までも案内をして下さいました。 「絵本の丘美術館」は、美術館といっても、那珂川の東岸に位置する3つの丘とそれらに挟まれた谷からなる広大なフィールドからなっています。フィールドの中には、美術館活動に賛同する佐藤さんの農場や畑が「えほんの丘農場」として営まれていて、実際に絵本にも登場する多くの動物達が暮らしていたり、水田のための溜め池が、トンボやカエル達の楽園になっているなど、人の営みがそのまま自然の生き物にとっても大事な役割を担っていることが実感できる場所となっています。そして、この豊かな自然の中での様々な出来事や体験が、キラキラと輝く結晶となって、いわむら先生の作品に凝縮されていることが感じられます。

絵本の丘を訪れる人は誰でも、『14ひきのとんぼいけ』や『ゆうひの丘のなかま・栗栖ちくりん』などといった作品の舞台にそのまま立つことができます。そして、その時の感激は、絵本を読み返す度に蘇って、ページの中に自分自身の姿を見つけることができるのです

館内の明るい喫茶室からは、目の前に広がる月見草の群落からその遥か遠く、筑波山までを望ことができました。見学を終え、それらの景色をぼんやりと眺めながていると、今日一日の出来事が自然と思い起こされてきました。そして、こうした豊かな体験をすることができたのも、いわむら先生のご厚意によるものと改めて心の中で感謝をし、今後益々のご活躍をお祈りしながら美術館を後にしました。

余談になりますが、「えほんの丘農場」で、大きなきゅうりとカボチャを買われた先生方、お味はいかがだったのでしょうか?(S.T)

いわむらかずお絵本の丘美術館

いわむらかずお絵本の丘美術館

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