横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.44  『 ピーターラビットのおはなし 』
ビアトリクス・ポター/作・絵  いしいももこ/訳  福音館書店

「ピーターラビット」と言えば、その可愛いうさぎのキャラクターを、いたるところで目にすることができます。そして、このお話は、作者のビアトリクス・ポター(1866〜1943)が、自分が可愛がっていたウサギのピーターをモデルに1893年に、ある子どもに書き送った絵手紙のお話がもとになっているようです。
ともあれ、「ピーターラビットのおはなし」は、自費出版されたのち、1902年にイギリスのフレデリック・ウォーン社から出版されました。そして、たちまち人気が出、英米ではロング・ベストセラーとなっています。しかし、どういうわけか日本に入ってきたのは遅く、子どもの手にぴったりの小型本として、1971年に石井桃子さんの訳で出されました。そして、その後現在まで長く愛されている絵本です。

私が年少組を担任しているときに、このシリーズの中で『こわいわるいうさぎのおはなし』を読んでみたことがありました。3歳の子ども達は真剣に聞き、それをきっかけに、ピーターラビットの絵本に興味を持ってくれた子どもがいました。そして、その子を膝の上にのせて、繰り返し読んであげたのが、この『ピーターラビットのおはなし』でした。
これらのお話を読んでいるときには、子ども達は、目も耳も総動員して、いたずら好きの主人公になりきってドキドキしながら、冒険しているのだなということが感じられました。途中でくじけそうになったり、悲しくて涙が出たりしながらも、最後はほっと安心できるところも、子ども達の気持ちにぴったりくるのだと思います。そして、この『ピーターラビットのおはなし』はシリーズ全24巻のうちの第1巻、お話の始まりにあたります。

『ピーターラビットのおはなし』をはじめとするシリーズを総じて、「絵本の宝石」とまで言われますが、洗練されたことばと、しっかりと観察されたリアルな絵に、その人気の秘密があるのではないでしょうか。
ポターは、18歳の時の日記に「どうして人は、美しい物をみているだけで満足できるのだろう。私はじっとしていられない。描かずにはいられない。」(吉田新一他『ピーターラビットからの手紙』)と綴っていますが、ポターの感じる「美しい物」のなかには、コウモリもキノコも、裏庭のバケツも含まれており、その観察眼の鋭さや感受性の豊かさが作品に表れています。ポターは、自然に対する愛情を貫いた生涯をおくったようです。そのことも、作品を支えている魅力なのかもしれません。(k、s)

ピーターラビットのおはなし

ピーターラビットのおはなし

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