横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.34  『 せかいのひとびと 』
ピーター・スピアー/絵・文  松川真弓/訳  評論社

年長組の子どもの中に、外で遊ぶよりも部屋で静かに本を読んでいるのが好きという男の子がいます。「天気がいいから外で遊ぼうよ」と誘ってみても、ニヤッと笑って首を横に振るのです。それでも時には外で友達と遊んでいる姿を見かけるので、友達と遊べずにいる時間を、本を読む事で何とか費やしているのではないように思います。

その子どもが、先日、保育者と一緒に廊下に図書コーナーを作って遊んでいた時に、保育者の「次はどの本読む?」という問いかけに応えて持ってきたのが、このピーター・スピアーの『せかいのひとびと』でした。
 その子どもは、保育者が本を読むのにあわせて、「ここはこうなんだよ」などと説明を加えていましたが、本の半ば頃にある「たいていの人は みんなで なにかをするのが すきだけど 一人で いるのが すきな人も いる」という部分を読んだ時に、「僕はこっち」と言って、「一人で いるのが すきな人も いる」と書いてあるところを指差しました。それまで、「一緒に遊ぼうよ」とか「天気がいいから外にでると気持ちがいいよ」などとさんざん言われてきたその子どもは、その事を伝えたくて、この本を読んでもらったのかもしれないと思いました

この絵本には、その名前の通り、世界の人々の姿や生活が描かれています。しかし、図鑑のように単に知識を羅列しているものではなく、スピアーがこの絵本を通して伝えたいという思いがどのページにもしっかりと綴られています。そして、その子どもが共感した言葉も、その一つだったのです。

ちょっと蛇足になりますが、外国で出版されているものと日本で出版されているものでは、日本人の服装や文化などにすこし違いがあります。これも目くじらを立てて見なければ、外国の人にはこう見えているのかなどと、逆に楽しく感じられるかもしれません。大きな書店などで時々目にしますので、興味のある方は是非ご覧になって下さい。(T.S)

せかいのひとびと

せかいのひとびと

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