横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.17 『 ボルカ 』
ジョン・バーニンガム/作  木島始/訳  ほるぷ出版

ジョン・バーニンガムは、イギリスの著名な絵本作家です。そして、そのバーニンガムの最初に手がけた絵本が、羽のないガチョウを主人公にしたこの『BORKA ボルカ』で、イギリスでその年の最も優れた絵本に与えられるケイト・グリーナウェイ賞を受賞しています。

『BORKA』の主人公は、メスのガチョウです。しかし、私には、バーニンガムはきっと自分自身のことを描いているのだろうと感じられます。そのガチョウが、理由はともかくとして、渡りの際に、親や兄弟たちから忘れられてしまうというのは、かなりショッキングなできごとで、バーニンガムが同じ様な体験を味わったというよりも、気持ちの上では、いつも孤独を感じながら育ってきたのかも知れないと感じます。

バーニンガムは、絵本作家となるまで、アルバイトをしながら各地を放浪していたとのことですが、バーニンガムの絵本の多くで見られる、旅をするとか、さまようといったモチーフは、このような経験から生まれてきていると思います。そしてその放浪生活の背景には、家庭における孤独感があったのかも知れないと感じます。

バーニンガムの絵本を読んでもう一つ強く感じることは、子どもや動物達にいつも向ける暖かなまなざしに反して、『なみにきをつけて、シャーリー』(ほるぷ出版)や『いつもちこくのおとこのこ』(あかね書房)などで見られるように、大人達へは時として実に辛辣な批判を示しているということです。この背景にも、同様な大人への不信感があるのかも知れません。 。

絵本の中では、最後に安住の地を見つけ、そこで知り合ったガチョウと特別仲良しになったと描かれていますが、冒頭に記されている「ヘレンへ」という言葉は、まさに特別仲良しのガチョウのことに違いなく、今月一緒に紹介している『きょうはみんなでクマがりだ』の絵を描いている奥さんのヘレン・オクセンバリーのことなのです。(T.S)

はるにれ

ボルカ

絵本インデックスへ戻る。