横浜市幼稚園協会

子育て応援団 〜絵本の散歩道〜

NO.5『スーホの白い馬』
大塚勇三再話  赤羽末吉画  福音館書店

好きな絵本をあげて下さいといったアンケートや、子どもの絵本○○選といったものには必ずといってよいほど登場してくる人気や評価の高い絵本です。お話は、ちょっと(かなり)悲しいモンゴルの民話で、先月紹介した『つるにょうぼう』と同じ赤羽末吉が絵を描いています。今では大きな絵本など少しも珍しくはありませんが、この本が出版される時には、その前に出版されたこれも名作の『かさじぞう』があまりにも売れなかったこともあってか、紙の裁断の効率や、書店の棚から飛び出してしまうので置いてくれないなど、様々な論議がなされたそうです。

しかし、若い頃モンゴルで生活していた赤羽末吉は、その実体験から、どうしてもこの大きさでなければモンゴルの草原の広がりを描ききれないと主張し、それを編集者の松井直が受けて出版に至ったという有名な話があります。規格の枠の中に絵を当てはめるのではなく、その内容によって絵本の大きさが決められるという良い例の絵本だといえるのでしょう。

実際、横長の見開き2ページを使って描かれている絵は、驚くほどの量感をもって草原の雄大さを感じさせてくれます。赤羽末吉は、瀬川康夫との対談の中で、日本人の美意識の一つに「余白の美」があり、それを絵本に取り入れたいと述べています。その余白は、単に空間があいているということではなく、ぴしゃりとおわる説明的な絵ではなく、読み手が自由に想像する余地があるという意味です。

絵本の最初と最後のページに描かれている昼と夜の二重の虹は対になっていて、単に草原の広がりを表しているのではなく、物語の始まりと終わりをやわらかく読み手に伝えてくれます。この絵本は、最近では小学校の教科書にも載っていますが、是非実際の絵本を見ていただいて、モンゴルの草原の広がりを十二分に感じてもらいたいと思います。(T.S)

三びきのこぶた

スーホの白い馬

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