NO.232 『バナナじけん』
作 高畠那生
バナナがひとつ落ちたところから、この『バナナじけん』は始まります。
さるは、バナナを食べて皮を捨てる。
次に来たうさぎは、その皮を踏んで滑る。
ここまでは、昔ながらのお約束の出来事ですよね。
では、しばらくして来たワニは、どうなると思う?
この絵本を年長児に読めば、話の展開に驚いたり、笑ったり、「次はどうなるの?」と期待したり心配したり。年少児に読めば、「たべて たべて ポイ!
ポイ! ポイ! ポイ! ポイッ!」や「すってん ころん!ばってん どたん!」などの擬音に大笑い。いつの間にか、子どもたちが『バナナじけん』の世界に入り込んで、自由遊びの時間にも、バナナを数えたり、自分たちで読んで、また笑っているのです。
私たち大人からしてみたら、バナナが落ちたぐらいで「じけん」と名前を付けてしまうなんて、大袈裟と思いませんか?
「せんせーい!ぼくのスプーンがおちた!」
「せんせーい!すいとうのおちゃがこぼれた!」
何か大きな「じけん」が起こったかの如く、毎日保育者に訴え掛けてくる子どもたち。子どもたちは、幼稚園やお家での些細な出来事も「じけん」と感じ、それが大きな体験・経験になっているのだと思います。
高畠那生さんの絵本には、他にも『でっこり
ぼっこり』や『おまかせツアー』などがあり、「次はどんな展開になっちゃうの?」「そうきたか!」と、わくわくドキドキ、そしてついつい笑ってしまうものばかりです。「おもしろいから、もう1かいよんで!」と子どもたちのリクエストに応えているうちに、私たち大人もいつの間にか夢中になってしまうと思いますよ。